国立科学博物館 特別展ミイラ「永遠の命」を求めて
国立科学博物館で行われていた特別展ミイラ「永遠の命」を求めて に行ってきました。

第1会場 展示は全4章
第1章 南北アメリカのミイラ
第1章では南北アメリカで発見されたミイラや副葬品が展示してありました。
中でも印象的だったのは「ミイラ包み」という、遺体の手足を折り曲げた状態で布で包むというもの。
ミイラといえば古代エジプトのミイラのイメージが強かったので、こういうミイラもあるんだ、と驚きました。
第2章 古代エジプトのミイラ
第2章では古代エジプトのミイラや、ミイラを作る材料、棺、さらには動物のミイラが展示されていました。エジプトでは死後の食料やペットとして鳥や猫がミイラにされていたそうです。
猫のミイラは初めて見ましたが、包帯でぐるぐる巻きにされているのに、耳の部分はリネンでちゃんと付け足されていてマスコット的なある種の可愛らしさも感じました。
第3章 ヨーロッパのミイラ
第3章ではヨーロッパで発見されたミイラが展示されていました。南北アメリカや古代エジプトとは違い、ヨーロッパのミイラは人工的なミイラよりも自然ミイラが多いそうです。
そして今回の展示会ポスターにも採用された2体のミイラはオランダの湿地で発見され、 ウェーリンゲメン(Weerdinge Couple) と呼ばれているそうです。当初は男女であると考えられていたそうですが、今ではどちらも男性であったと判明したそうです。骨がなく、皮だけという状態に驚きました。
そしてヨーロッパではこのほかにも湿地からミイラが数多く出土し、これらは湿地遺体(ボッグマン) と呼ばれているそうです。
他にイデガールと呼ばれる少女のミイラのレプリカや、その復顔像は強烈な印象がありました。ミイラの首には死因とされる紐が巻き付いたままでした。
湿地遺体の多くは殺傷痕や絞殺痕が見られるそうで、生贄説や犯罪者として処刑された説などがあるそうです。
第4章 オセアニアと東アジアのミイラ
第4章ではパプアニューギニアや日本のミイラが展示されていました。
パプアニューギニアでは長らくミイラ作りが行われていなかったそうですが、そんな中約50年ぶりにミイラが作られたという記録ビデオが流されていたのですが、なかなかショッキングな映像でした。
遺体を椅子に括り付けて約3カ月小屋の中で燻り続けるという方法で、見ているだけでも制作にあたる遺族は精神面でも体力面でもとても大変だろうと感じました。その後遺体は村を見下ろす高い場所へと安置されていました。
日本のミイラは4体、うち自らミイラになろうとして成功した本草学者や、即身仏 弘智法印 宥貞が展示されていました。
第2会場
国立科学博物館で過去に展示されたミイラ
ミイラ展のグッズ売り場近くに設置された第2会場には、国立科学博物館が所蔵する伝インカ帝国のミイラ、メキシコのミイラ、南米ヒバロ族の干し首が展示していました。
遠くから見て、ガラスケースの中に人形の頭部が展示してあると思い、近くで見ても小さな頭なので人毛を使った人形なのかと思ったら「ヒバロ族の干し首」と解説してあって驚きました。
干し首というのを初めて見たのですが、近くで鑑賞していた人が「人間の頭ってこんなに縮むんだ」といっていたのが印象的でした。
干し首の作り方解説もあったので読みました。なるほど、だから小さいのかと思いました。しかし19世紀にお土産として日本にやって来たそうですが、もらった人も反応に困ったことでしょう。
感想
鑑賞しながら解説文で死因を読んだり、局部に置かれた布に気付いたりした瞬間から「ミイラ」という認識から「ご遺体」という認識の方が強くなってしまいました。
もちろんミイラは死んだ人や動物の姿だというのは認識していたつもりですが、生前の姿を想像してしまったら果たしてガラスケース越しに「鑑賞」するこの行為ってアリなのだろうか、と考えてしまいました。
この特別展ミイラ「永遠の命」を求めて、は「ミイラを科学する展覧会」というキャッチコピーがついています。
本展は、最新科学によって明らかになったミイラの実像、ミイラの文化的・学術的な価値、そして人類がもつ多様な死生観と身体感を紹介するこれまでにない”ミイラを科学する”展覧会 です。
国立科学博物館
この展示が東京国立博物館ではなく国立科学博物館で展示されたのも納得です。ミイラを見るには感情から距離を置いたより「科学的」な視点が求められるのでしょう。
また今回の展示を見ることで、自分の中では「即身仏」が「ミイラ」とは違うカテゴリにあったことに気付かされました。そうですよね、即身仏もミイラです。
しかし今回の展示では即身仏 弘智法印 宥貞だけが新しい着物を着ていて、黒塗りの立派な厨子の中に納められていました。今でも信仰の場で大切にされているというのが一目でわかる展示になっていました。
宥貞への生きている人に接するかのような扱いはまさに展示会のタイトルにもある「永遠の命」感があると思いました。