映画「アルキメデスの大戦」

映画「アルキメデスの大戦」を見てきました。

ストーリー

舞台は昭和8年。老朽化した戦艦「金剛」に代わる新造船を、「戦艦」にするか「空母」にするかという会議が行われた。

当時日本海軍内には大艦巨砲主義と航空主兵論との派閥争いがあった。

菅田将暉演じる主人公、数学の天才櫂直(かい ただし)は航空主兵論を主張する山本五十六に誘われ海軍入り。海軍主計少佐という地位を与えられ、お目付け役の海軍少尉田中とたった二人で巨大戦艦建造計画の問題点を数学の観点から暴くことになる。タイムリミットは最終決定会議までの2週間。

 

感想

巨大戦艦の偽装費用を暴くための謎解きと、時間制限があるゆえの切迫感、数々の妨害にあいながら徐々に距離を縮めていく櫂と田中のバディ感、などスピーディに展開していくなかでも見所がたくさんあってとても面白かったです。

 

唯一なぜヒロインが主人公をあんなにひたむきに慕うのかの描写がほとんどない、というか一切ないのでよくわかりませんでしたが、まあ演じているのが菅田将暉だし、という「菅田将暉の容姿を持つ帝大の天才」ならまあ、そんなものかな?という力業の説得を自分にかましました。そのあたりの関係性を掘り下げられても冗長になっていたかも、とも思うのでまあ仕方ないところでもあるのかもしれません。

そして映画の序盤に戦艦大和が沈む姿が描かれているので、すでに会議の行方を知っていながら主人公櫂の奔走を見守ることになり、また同時に我々後世の人間は史実から航空主兵論の方が有用であったということも知りながら作中の派閥争いを見るという、二重になんだか苦いものを抱えながらストーリーを追うことになるのですが、それでも最後の会議の行方がどうなるのか、ハラハラしながら見続けました。

平山造船中将に対する櫂の板書に数式を書き込むシーンは本当に凄かった。圧巻でした。
そして何より平山中将の存在感。逆転につぐ逆転劇。
最終的な櫂の選択、いやあもうあんな悪魔的なささやきには抗えないのも仕方ない、と思わされました。

当時の人は一体どんな思いで戦艦大和を作ったのか、明晰な頭脳を持っている人達だったのだから、作中の櫂や平山中将のように考えていた人たちもいたかもしれないなと思わされました。
もっとも当時は作中の嶋田海軍少将のような意識が多数派だったとは思いますが。

日本の戦争映画としては珍しい視点からの作品だったと思います。実際にあった「金剛代艦」会議をモデルに史実を再構築してエンターテイメントに仕上げた手腕は見事でした。 建造費の偽装も史実だったとは驚きました。

菅田さん、数学の先生について作中の数式の意味をすべて理解したうえで演技していたと知って驚嘆しました。舘ひろしさんの山本五十六はとてもカッコよかったです。最後の最後に現実主義なところを見せる演出も素晴らしい。そして何よりも平山中将を演じた田中泯さん。凄かったです。最後の櫂と平山中将のやり取りこそがこの映画の一番の山場なので、菅田さん演じる櫂と田中さん演じる平山中将、この二人だからこその説得力のあるシーンだと思いました。

日常,映画

Posted by sata04