映画「二百三高地」
実写版「ゴールデンカムイ」の映画が評判がいいようなので見に行きたいなあと思っていたら、東映チャンネルで日露戦争120年ということで日露戦争の作品特集が行われていました。
日露戦争120年【特集 日露戦争 】
今年2月、開戦から120年を迎える「日露戦争」を題材とした作品を特集! 最大の激戦地・旅順の二百三高地の攻防戦を描いた映画『二百三高地』とそのTVドラマ版『二百三高地 愛は死にますか』全8話を一挙放送!
東映チャンネル
他にも「日本海大海戦 海ゆかば」などがありましたがとりあえず映画「二百三高地」を見てみることにしました。
予告編
感想
いきなり日本軍人2人の処刑シーンから始まって、誰? いつ? と思いながら見始めました。(あとで見直したらテロップに明治37年満州ハルビンとありました。)
私の日露戦争知識はほぼ教科書の遠い記憶の中にしかありません。主人公は誰だろう、と思っていたらどうやら乃木希典と招集された小学校教諭というオリジナルキャラクター(おそらく)のW主演のようでした。
二人を通して最前線と政治の両方をそれぞれの視点で交錯するように描かれていました。
とにかくまず思ったことはとても制作費かけてるんだろうな、ということ。近年の映画に慣れているものとしてはこんなに人も建物も衣装もよく用意できたな、と驚嘆しながら見ていました。とにかく圧倒的画面力。
人がたくさん! ワンカットしかないシーンでもしっかり人がたくさん! セットもしっかりしている。ロシア人キャストもたくさん! 贅沢〜!
リマスター版でしたが画面が最近の映像ほどクリアすぎないので建物内部など重厚感を感じられる気がしました。特に軍司令部のシーン。
戦争の経過については図面、ナレーションで分かりやすかったです。
特に旅順要塞についてはまず高圧電流が流れる鉄条網があり、そこを突破すると当時の日本にはなかった機関銃を備えた外濠の銃眼があり、同じく日本になかった手榴弾や海軍の機雷もあるし、そのあともカポニエールと呼ばれる要塞に落ちたら逆茂木に串刺しにされるし、そこを集中砲火されるよ、とまず教えてくれている親切仕様でした。
お陰で私のようにさっぱり知識のない人間でもこれから攻めるの? あそこを? 無理では? という気持ちで見れました。突撃攻撃を始めると今は鉄条網だけどここを突破しても次は機関銃が待ってるよ、とハラハラしながら見ていました。
そして制作が40年以上前なので知っている俳優さんがほぼいなくて、(知っていても若い頃なのでほぼわかりませんでした)とても没入して見れていたのに突然響くさだまさしの歌声に現実に引き戻されました。
なんで今? そして突然画面いっぱいに表示され続ける歌詞。謎の演出にこれで終わりなのかと戸惑っているうちにドラマパートに戻りました。ここでこの映画がとても長いことに気付き、ひょっとして上映時には休憩時間が取られていたのかな、と思い至りました。
調べたらインターミッションと言って、長い映画には休憩時間が設けられているものがあるそうです。知らなかったです。
ここからはネタバレの感想になります。
映画の作りとしては金沢で招集された新兵4人と主人公の教師に感情移入しながら見てしまうので、彼らが無事に帰れるといいなと思いながら見続けますが、繰り広げられる地獄絵図に一人ひとりと散っていき、まさか主人公まで亡くなるとは思いませんでした。
〇〇攻撃失敗 〇〇隊全滅
突撃しては死んでいき、隊の名前を変えての攻撃と全滅のテロップを見続けることになるので、あまりに無謀すぎるのでは? 他の策はないのか? 兵卒の命を何だと思っているんだろうという気持ちになりました。その分児玉源太郎が着任してからの戦局の変化の圧倒的なスピードに驚きました。
史実ではどうかはわかりませんがこの映画だと乃木希典じゃなかったらここまでの損害にはならなかったのでは? という気持ちになってしまいました。ましてや途中更迭案が出たときに乃木の名誉のため(更迭したら自害する可能性があるから)それはやめておこう、という話になってしまっていたので。そういう気持ちになってしまったので終盤での見せ場だろう明治天皇への涙の奏上も膝をついてそこまで号泣する? と戸惑う気持ちになってしまいました。あなたの作戦でしたよね? と。もちろん作中でも描かれていた通り息子二人とも戦死し、数多の将兵が犠牲になってしまったことに対しての悔恨の涙なのは伝わるのですが。
作中では穏やかな好人物としても描かれていましたが、同時に前線の凄惨な情景もこれでもか、と描かれていたので他の登場人物たちほど心を寄せて見るのは難しかったです。
ストーリーは全体としてはとてもよくまとまっていたと思います。
金沢新兵4人の名前を覚えきれなかったので太鼓持ち、豆腐屋、脱走兵、ヤクザと覚えていたのですが、この4人が互いを思いやる様子にとても心を動かされました。特にヤクザが脱走兵に銃を向け、指を吹き飛ばせば国に帰れるという自分にもリスクが有る提案をしたときに、脱走兵がお前たちとも一緒に帰りたい、死ぬならみんなと一緒がいいと言って泣くシーンは一番印象に残っています。
あとはヒロインの今後がとても心配になりました。実は籍を入れていなかったという展開にはびっくりしました。年金や弔慰金もなしで今後血の繋がらない子供2人育てないといけないのはなかなか過酷だなあと。
そしてエンドロールで豆腐屋が元気に豆腐を売っている姿を見て嬉しくなりました。よかった生き延びてた!
あれ、ヤクザはどうなった? と見返したらいました!「旅順二百三高地一番乗り実戰報告大講演會」の垂れ幕の下で軍服で講談していました。したたか〜! 生きててよかった!
軽いノリで見始めたらまさかの3時間超えの超大作でしたがとても見ごたえのある作品でした。