国立歴史民俗博物館「ニッポンおみやげ博物誌」

国立歴史民俗博物館で行われていた企画展示「ニッポンおみやげ博物誌」を見てきました。



「おみやげ」をメインとした企画展示と聞いて、最初は日本中の有名なおみやげが展示されるのかな?と思いました。ご当地おみやげが大好きなので、それならぜひ全国有名どころのおみやげが一度に見れるものなら見たいと思いこの企画展に行きました。

実際は近代日本におけるおみやげの文化を歴史的な事象としてとらえ、さらにはモノとしての価値だけではなく時代の特質もおみやげから感じるという面白い展示になっていました。


展示構成は全5章
【1章】 アーリーモダンのおみやげ
【2章】観光地のブランド化とおみやげへの波及
【3章】現代におけるおみやげの諸相
【4章】 旅の文化の多様化とおみやげの展開
【5章】 おみやげからコレクションへ


第1章では参勤交代を端緒とした交通網の整備により、旅行ブームが起こり、進物便覧といった贈答のマニュアル書が発行されていたことが紹介されていました。

ここで江戸時代でもすでに「虎屋」は全国的に有名で、大阪では贈物に他の店のものを使うのを恥じるほど人気だったと知りました。 この「虎屋」っておそらく今の「とらや」ですよね。

第2章では近代に行われた国家的な「名所」や「聖地」の選定と創造、国立公園の誕生、文化財制度、世界遺産登録による観光地のブランド化の歴史が紹介され、ここで展示されたおみやげのパッケージには「重要文化財」「世界遺産」などの文字が載っていました。


第3章では現代のおみやげを5つに分けて紹介していました。
1、自然物を資源としたもの(鹿児島の火山灰缶詰など)
2、建物や場所を資源としたもの(城の絵葉書など)
3、工芸品など有形の文化を資源としたもの(郷土玩具など)
4、無形の文化を資源としたもの(方言の暖簾など)
5、人物・キャラクター・身体性を資源としたもの(ご当地ゆるキャラグッズなど)
この章では他にもミステリーゾーンとパワースポット、またコンテンツツーリズムとしての「聖地巡礼」、18歳未満が入場できないセクシャリティと旅がからんだおみやげコーナーなどもありました。
聖地巡礼として有名な茨城の大洗以外にも、熊本の人吉も「夏目友人帳」で紹介されていて驚きました。漫画は読んでいましたが人吉が舞台とは知らなかったです。

第4章では旅の目的の多様化として植民地への観光、修学旅行、ディスカバージャパン、ダークツーリズムといった変化を紹介していました。
JTBの前身が明治にはすでに存在していて、さらに満州に支部まであり植民地ツアーを行っていたことに驚きました。

第5章ではおみやげの行方。今回の展示で一番面白かったのは、この章で展示された「消費されるおみやげ‐とある職場のおみやげ目録」というコーナー。

ここでは国立歴史民俗博物館の研究協力課に2015年からの3年間でもたらされたおみやげの分析が行われていました。実際のおみやげの箱も展示してあり、なかなかの量。
なんと34名の研究者が189個持ってきたそうです。
おみやげを持ち帰る可能性のある期間中出張に行った人は47名なので、全体の4分の3がおみやげを買ってきたそうです。
さらにどの研究分野の人が買ったかの割合や、購入エリアの分析、おみやげの平均額、役職ごとの購入金額の平均値など、身を削るような展示だなあと感心してしまいました。
ちなみに民俗学の研究者によるおみやげがの比率が一番高かったそうです。
他の情報系、歴史系、考古系はほぼ横並びだったそう。

さらに江戸末期の「懐溜諸葛(ふところにたまるもろくず)」という、着物の懐にたまった紙くずを帳面に貼ったいわゆるスクラップブックが紹介されていて、そんなものを集めていた人(集団)がいたことに非情に愉快な気持ちになりました。そしてそれが今や当時の庶民文化を知る貴重な資料となっているとは、集めていた人も思いもよらないことでしょう。

今回の展示は普段何気なく贈ったりもらったりしている「おみやげ」を様々な視点から眺めることができてとても楽しかったです。

博物館,特別展

Posted by sata04