迎賓館赤坂離宮(東京都港区)

日本で唯一のネオ・バロック様式の西洋宮殿。かつては紀州徳川家の江戸中屋敷があった場所にあります。
当初は東宮御所として明治24年(1909)に竣工。戦後は国に移管。
昭和44年(1959)から改修工事が開始。
昭和49年(1974)に本館東側に新設した和風別館「游心亭」とともに迎賓館赤坂離宮が完成。
平成21年(2009)に創建当時の建造物である旧東宮御所(迎賓館赤坂離宮)本館、車寄及び階段附属、正門・塀、東西衛舎、主庭噴水池、主庭階段が国宝に指定。
平成28年(2016)一般公開を開始。

正門(国宝)

正門

創建当初は黒色と金色でしたが、昭和の大改修で現在の白色と金色に変更されました。中央上部に菊花紋章。
通常の見学客はこの門からは入れず、西門でチケットを購入する必要があります。

本館(国宝)

建設の総指揮者はジョサイア・コンドルが教鞭をとった工部大学校(現在の東大)の第一期生・片山東熊。当時は宮内庁の営繕組織である内匠寮の内匠頭でした。
室内装飾の調査や参考図の製作は東京美術学校の黒田清輝や岡田三郎助、模様図案調査には東京帝室博物館の今泉雄作、油絵制作には京都工芸学校の浅井忠などが関わっていました。

本館
ペディメント

ペディメントには中央の菊花紋章の左右に鎧と兜が埋め込まれています。

正面中央部の軒上には阿吽の鎧武者像、両脇には天球儀が。
洋風建築でありながら随所に和風の彫刻・装飾が施されています。

正面玄関の鉄扉

フランスの装飾鉄製品会社から輸入された正面玄関の鉄扉。上部に菊花紋章、扉左右に桐の紋章。

主庭の噴水(国宝)

主庭の噴水

サツキの花が見ごろでした。
中央部分の装飾は、彫刻家佐野昭が原型を作り、岡崎雪聲(せっけい)が鋳造しました。
岡崎は上野公園の西郷隆盛像や皇居外苑の楠木正成像なども手掛けています。
グリフォン、亀、シャチ、ライオン、イルカの5種類の動物(架空の存在を含めて)がいるそうです。

ガーデンカフェ

アフタヌーンティー

前庭では障がい者のカフェ事業を行っているNPO法人パークカフェが運営するキッチンカーがあります。
予約すると赤坂離宮を前にアフタヌーンティーを楽しむことができます。アフタヌーンティー以外にも予約不要なドリンクや軽食があります。

雑記

迎賓館として現役の施設でもあるので、参観者は入門時に手荷物検査が必要でした。本館内は撮影禁止。公開日も国賓等の接遇などで急遽中止や変更になることがあるそうです。

館内はとにかく豪華絢爛とはこういうこと、といった趣でした。建設費も当初の予定の二倍となり、完成した建物を見た明治天皇が「贅沢すぎる」と言われたほどだそうです。
明治という時代を象徴するかのように「富国強兵」の国策を反映して意匠にも鎧や軍刀などの武具が取り入れられ、煌びやかな内装も堅牢な建物も、西欧列強にも負けない宮殿ひいては国だと示したかったのだと伝わってきました。
レンガ1300万個、鉄骨約3000トンが用いられるという強固な構造体によって関東大震災でもほとんど被害がなかったというから大したものです。なんと壁で最も厚いところは1.8mもあるそうです。

平日の午前中に行ったので、参観者はご高齢の方が多かったのですが総じておしゃれな格好をされていました。「宮殿に行く」ということ自体を楽しんでいる感じが素敵でした。次に行くときは私も「宮殿に行く」ことを意識しようと思います。

史跡,明治時代

Posted by sata04