港区立郷土歴史館(東京都港区)
旧公衆衛生院(港区指定有形文化財)

港区立郷土歴史館のある建物は、もとは公衆衛生院として使用されていました。旧公衆衛生院は米国ロックフェラー財団の支援・寄付により建設されました。
設計は東京大学建築学科教授の内田祥三(うちだよしかず)、昭和13(1938)年竣工。
「内田ゴシック」と呼ばれる鉄骨・鉄筋コンクリート造、スクラッチタイルで覆われたゴシック調の外観が特徴です。地下1階地上6階塔屋4階の規模をもち、高さは38.7m、両翼の端から端までの長さは約80mあります。隣に建つ東京大学医科学研究所と対になって建てられました。
内田の代表作は東京大学の本郷キャンパスや大講堂(通称安田講堂)、駒場キャンパスなど。
開館時間 | 午前9時~午後5時(土曜日のみ午後8時まで) ※有料展示室の入館受付は閉館の30分前まで。 |
休館日 | 毎月第3木曜日(祝休日等の場合は前日) 年末年始(12月29日~1月3日) 特別整理期間 |
入館料 | 大人300円 小・中・高校生100円 ※特別展・企画展は別料金 |
展示構成は3つ
テーマⅠ海と人のダイナミズム
- 東京湾内の世界
- 内湾の海洋資源を求めて1~貝塚の世界~
- 内湾の海洋資源を求めて2~本芝浦・金杉浦の漁業~
テーマⅡ都市と文化の広がり
- 江戸の町づくり
- 近世寺社の世界
- -1 大名屋敷と大名 F-2旗本・御家人の世界
- 町人のくらしと文化
テーマⅢひとの移動とくらし
- 国際化にみる近現代
- 教育にみる近現代
- 交通・運輸にみる近現代
- -1生業・産業にみる近現代 K-2戦争・災害にみる近現代
雑記
率直な印象は財政に余裕を感じるというものでした。さすが港区。「区立郷土資料館」と聞いて思い浮かぶレベルをはるかに超えた常設展示でした。プロジェクションマッピング、壊れていない映像機器、体験できる展示物、15メートルにも及ぶ貝塚断面の剥ぎ取り展示、建物の見学スポットではQRコードが付与されて詳しい説明を見れる(Free Wi-Fi完備という見事なサポート付き)。
常設展とは別の無料のコミュニケーションルームには約7メートルものクジラの骨格標本が展示されており、スタッフに申し出れば骨格標本や縄文土器などに触れるそうです。
とにかくものすごい数の展示物な上に建物自体も見学スポットが多々あり、見ごたえがすごかったです。
建物見学スポット
この建物は公衆衛生院として始まりましたが、その役割は平成14(2002)年に国立保健医療科学院へと引き継がれ和光市へ移転。
港区は平成21(2009)年にこの土地と建物を取得し改修工事を行い、平成30年に郷土歴史館を中心とする複合施設「ゆかしの杜」としてオープンしました。
令和元年(2019)9月27日に、港区指定有形文化財(建造物)に指定されました。


2階中央ホールではちょうどコンサートが行われていました。歴史館では定期的に行われているそうです。
旧院長室は建物の中で一番手が込んだ設え。当時高級だったベニヤ材が床と天井に使用されています。家具は現存しないので復元したもの。


旧講堂は340席の階段教室。建設時に設置された椅子や机など、当初の姿とほとんど変わらない空間。
内田祥三が自宅で使用していた机。内田自身が設計し、百貨店の三越に制作を依頼したと伝わっています。